ドリームライフ

美的で快適な片付く空間のつくり方

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“ハレとケ”をキーワードに片づく空間を考える

 物にもハレ(非日常)とケ(日常)があります。つまり、見せる物と隠す物とをはっきりさせると、収納に装飾という楽しみが加わります。
 ハレとケの基準や捉え方は人の好みやライルスタイルによって異なりますが、一般的には、ハレ=見せてもよい美しい物や大切な物、ケ=設備や家電、生活雑貨など視界に入ることが好ましくないもの。これらをしっかり区別することが片づく空間をつくる上では大切だと思います。美的で快適な「片づく暮らし」のための3つのポイントを、それぞれの実例をご覧いただきながら紹介しましょう。

 

見せるものと隠すものを決める

 

住宅では機能性が快適さにつながりますから、機能性を高める設備が充実していることは大切です。でも、機械的なものに囲まれると、人は心地のよさを感じられません。美しく、快適かつ居心地のよい空間をつくるためには、機械的な設備を感じさせない意匠が、住宅のインテリアをデザインする際に不可欠な課題です。例えば、大抵の家にあるテレビは、リビングの中心に置かれることが多いですが、テレビが中心のインテリアは美しいとはいえません。壁や家具に収納することでその存在感をなくすことができます。生活に不可欠な家電の一つ、冷蔵庫も近年、素敵なデザインのものも増えましたが、空間に合わない場合は上手に隠すという手法もあります。

暮らしの実例

1)テレビは石の壁の中にはめ込み、AV機器は階段の一段目に収納。空調設備は天井内に埋め込むなど、設備や家電が存在感なく隠されています。

2)リビングダイニングの中にオープンキッチンがある、ワンルームタイプの住宅。冷蔵庫はキッチンカウンターの左の扉に収納。扉は壁に収納し開け放すことも可能。レンジフードはキッチンカウンターの吊り収納の中に隠して設置。キッチンの設備機器を隠すことで、ワンルームのLDKが美しく快適な空間に。

住宅において、キッチン、洗面所、バスルームなどの水廻り空間は、かつては見せたくないケの空間でしたが、近年では見せるハレの空間に変化しています。ただ、その中でも見せたくない部分はありますから、それを上手く隠しつつ、ハレの空間を楽しみたいものです。

暮らしの実例

3)料理をしながら、家族やゲストとコミュニケーションが取れるオープンキッチン。左の壁に収納された大きな引き戸で、キッチン全体を隠してしまうことができます。匂いを遮断したいとき、急な来客の際や、洗い物を隠して食後のコーヒーを楽しみたいときなど便利です。インテリアに溶け込む素材と色の引き戸なら、空間の美しさ、快適さも損なうことはありません。

 

物の指定席のような専用のスペースを作る

 

キッチンや洗面所は物に溢れ、それらは日常的に使用する物が多いはず。表に出たままになっていると散らかった印象になってしまうそれらのものを上手に収納することも、片づく暮らしには大切です。ただ、収納しやすいことと同時に求められるのは、取り出しやすいこと。専用の引き出しなどの収納スペースを用意することで解決できます。そしてその専用スペースには、物を詰め込みたい気持ちはぐっと抑えてください。取り出し動線を意識することもポイントです。

暮らしの実例

4)キッチンカウンターの下にある、ランチョンマット専用の引き出し。必要なときにさっと取り出せて、使い終わったらまたきちんと戻す。使う場所のすぐ近くに設けられていることも使い勝手がよく、片づくポイント。

5)洗面台の引き出し。ドライヤーやひげ剃りなど、洗面台の下に専用の引き出しを設置。最上段は毎日使うドライヤー専用。コンセントの位置もポイントです。

 

好きなものという統一感で快適に

 

よく見ると物が多く“片づいていない”空間のはずなのに、魅力的! という空間もあります。それは、そこにあるアイテムはバラバラでも、そこに暮らす人の好きなものだけが存在している場合。魅力的かつ心地よい空間です。普通なら排除したいと思う生活感さえも“味”になります。

暮らしの実例

6)お料理が大好きで、頻繁にゲストを招いて手料理でおもてなしする、ファッションデザイナー、コシノジュンコさんのご自宅の食器棚。統一感があって美しい食器類が見事に収納されています。

暮らしの実例

7)膨大な食器を、種類で分類して機能的に収納。食器の量や大きさを事前にリサーチして設計の際にサイズを決めました。扉を大きな引き戸にしたことで、全体を見渡すことができて、お目当ての食器を簡単に見つけることができます。

 

 きれいに片づいた空間は気持ちがよいものです。ポイントは、ハレとケの、ケの物が収納されている空間。ケは決してネガティブなものではなく、日常生活に必要不可欠なもの。それらを雑多に見えないよう上手に隠すことで、ハレが生きてきますし、デザインによってケをハレにすることも可能です。個人によっても、時代によっても異なるハレとケ。自分にとってのハレとケとは何か、一度考えてみてはいかがでしょう。日々の生活が整理され、それは豊かな人生にも繋がると思います。




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