ドリームライフ

非日常の空間でおもてなしを考える住まい

インテリア

「人とあつまる、人を招く」をテーマに、住空間においての人をもてなす仕掛けについて教えてもらいました。

 

目次

1.非日常の空間はそこに暮らす人にとっても楽しい空間になる

2.非日常的仕掛けは日常の空間や生活をも活き活きとさせてくれる

 

非日常の空間はそこに暮らす人にとっても楽しい空間になる

 

前回、日常生活と密接に関わる「食」は、その家でどう暮らしたいかの指針になるとお話しましたが、「人を家に招く」ということも家づくりを考えるときのポイントになります。私は「人を家に招く」ことには「人をもてなす」という意味合い、思いが含まれていると考えています。「もてなす」ときに大事なのは空間の“ハレとケ”、日常と非日常ということで、人が集まる空間づくりの要となるのはやはり「食」、そして「楽しむ」ということだと思います。人が集まれば必ず食べたり飲んだり、また会話をし、何かを見たり聴いたりして楽しみます。そのため、クライアントには「人を招く」ことに関しての考えを必ず伺うようにしています。

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水盤のある中庭を囲んで空間が配置される、回遊できるマンションに

以前、こんなこともありました。ファッションデザイナー・コシノジュンコさんご夫妻のご自宅を設計した際に「自宅=ハレの空間」と、きっぱりとおっしゃいました。ご自身のプライベート空間は最小で、ほぼ全体が“ハレ”である空間にしたいという要望だったのです。実際に、コシノ邸ではファッションショーやパバロッティのオペラ会など、さまざまなイベントが開かれています。まさに、究極の人を招く空間といえますね。

「人を招く」と考えると、ゲストがその家を訪れたときに最初に目にするのは家の外観。私はゲストの目線になって、順番にシーン展開をイメージしながらインテリアを考えますが、家に入る前のアプローチや玄関の前もドラマチックだとワクワクしますよね。ですので、玄関の扉を開けたときの空間の演出にも工夫を凝らしたい。できれば、季節を感じるような設えができる場所であってほしいと考えています。

 

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マンションのエレベーターを降りると床が浮遊したような空間が。3m以上の高さのあるエントランス引戸がドラマチックにゲストを迎える

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飾れるスペースのある玄関。正面すべてが革貼りの靴箱になっており、スリット状のニッチスペースが季節感などを演出できる飾れる場所に

 

非日常的仕掛けは日常の空間や生活をも活き活きとさせてくれる

 

人を招く上で重要な「もてなし」は、玄関だけでなく、住宅の各スペースでいろいろとあります。それぞれの空間におけるもてなしの「仕掛け」をあげてみましょう。

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暖炉を囲む床を掘り下げたソファ。囲まれたようなリビングスペースは心地よく、自然と人の集まる空間に

この軽井沢の別荘のリビングには人を招くためのいくつかの仕掛けがあります。中心には、炎や温かさで人を惹きつける暖炉を設置。暖炉の周りに人が集いくつろげるように、一段掘り下げたところにソファを設置しました。目線を下げると、前回ご紹介した“ヌック”のような籠もり感、心地よさが得られます。

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ホームシアターもリビングで大勢でも楽しめる仕掛けのひとつ

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ワインコレクターが見えるセラーを設えたリビングダイニング。ワインセラーを“見せる”仕掛け

そして、「食」に欠かせないキッチンにもひと工夫。キッチンに入って一緒に料理をしたり片付けたりする親しいゲストを想定する場合は、キッチン・ダイニング・廊下などの導線を大切にしますし、料理をするところはいいけれど片付けは見せたくないというクライアントの希望にはオープンキッチンのシンクを一段下げて、下げた食器が見えないようにするなど配慮をします。キッチン=生活感と考えるクライアントのためには、来客時には引き戸でキッチンを隠す仕掛けをつくりました。

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キッチン、ダイニング、リビングを引戸で仕切れるプラン。“ハレとケ”を分けられるようにしながら、全体をつないだ自由な空間に。

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日常はオープンキッチンに、非日常のパーティーでは、クローズドキッチンにもできる2wayキッチン

そして、ゲストが必ず訪れる空間=トイレの存在も忘れてはいけません。小さな空間でありながら、重要なリラックス空間。機能優先になりがちな場所だからこそ、私はちょっと驚きのある、ゲストを楽しませるような工夫のあるインテリアがいいと思っています。人をもてなすことを考えて工夫した非日常空間のインテリアは、日常の空間をも活き活きとさせてくれるはずです。

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置き型シンク。つくばいのようなデザイン

人とどのように集いたいか、人をどのように招きたいか、もてなしたいか、ということは、人それぞれ異なっていて、自身のライフスタイルが写し出されるテーマだと思います。そして、人へのもてなしを考えた住まいは結果的に、自分自身にとっても心地よい、楽しい空間になるものです。




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